ふぁさり、と、私の背中に服が掛けられる。

「風邪引くよ?」

私の耳に注がれたのが、一体、誰の声だったのか。
もう、何もかもどうでも良くて。

唇を動かす力さえ奪われていた私は、引きずられるままにそのまま眠りに落ちていった。



「可愛いなー、僕もこんな人間の彼女欲しいなー。
ねぇ、キョウさん、貰っていい?」

無邪気な声が近くで響く。

「駄目」

こちらは冷たい低い声だ。

「ケチだなー、減るもんじゃないし」

「減るさ。まずお前のそれでなくても残り少ない寿命が」

「あれ?
キョウさんってそこまで分かるの?
魔界の方だとは思ったんだけど、もしかして……」

「ここに居たいんだったらそれ以上詮索しないほうがいい」

「ふぅん。
それにしても、わざわざ、彼女が自分のモノだって見せつけるためにここまでヤる?
そこらへんのおざなりなアダルトビデオなんて、十分上回っていた気がするけどね。
僕がお年頃だったらこれだけで、何日も一人でイけるね。
それに、可愛い彼女、気を失ってるじゃない?」

ええっと、そこの可愛い声のキミ、今なんて?
男同士の会話ってこんなモンなの?

「それは……」


だから、そんな会話が耳に入った気もするけど。
それは夢かもしれなくて。

だけど、たとえ夢でもなんとなく、最後の言葉が聞けなかったのが少しだけ残念な気がした。