……

男性経験が少ないことは、認めましょう。
どうせ、キョウ以外の男のことは知りません。(ってことは、人間の男を知らないってことになるんだけど……、なんかちょっとだけむなしくなるので深くは追究しないでください)
そのせいで、世間一般のあれやこれやの知識が薄いことも認めましょう。

でも、その薄く浅い私の経験と認識と人の話を総合したところでは、男女の営みというのはベッドの上で行うものだと信じて疑わなかったんですが。……いや、布団の上でも結構ですが、別に。

出来れば灯りもぐっと落とした感じで。


なのに。
こんなに明るい場所で、その上。

えーっと……。
立ったままっていうのは、その……。
テーブルの上に上半身を乗せて……。
壁に背中をつけて片脚を上げ……。

いえ、もう何でもないです。
これ以上、この件に関しては考察したくない、っていうか。語りたくもないっていうか。その、まぁ。

コホン。



とにもかくにも、ようやく解放された私は。
まるで、激しいスポーツでも終えたみたいに、呼吸は乱れまくり、汗で髪は張り付いていて。
指一本動かすのもダルくて、ダイニングの椅子が汚れるのも厭わずそこに座ってテーブルに頬を乗せていた。
冷たい木の感触が、頬に心地よい。

だらりと両手を下にさげ、私は壊れた操り人形さながらに瞳を閉じていた。

……本当に明日からまた、この食卓で食事が出来るのか、私は少しだけ自信が無いのです……。