「じゃあいいわ。そのままで。
一緒に公園に行こう」

「えー、折角ユリアちゃんのこと優しい人だと思ったのに」

「極悪人と思っていただいて結構です」

惑わされちゃダメ、惑わされちゃダメ、と心の奥で呟きながら冷たく言い放つ。

「ユリア、もう出来たから、先に夕食を食べてからにして」

「……はぁい」

キョウに言われて、それに従う。

食事はやっぱり楽しく美味しく頂かないと。
作ってくれた方を怒らせてはいけません。これは、何処の家庭にでも必要な心得だと思うけれど。
もちろん、うちでもそうなのです。

白ご飯、ブリ大根、ほうれん草のおひたしに、たこの酢の物、そして豆腐の味噌汁。
ついでにデザートは白玉団子の浮いたお汁粉だ。

凄い。
どう考えても私にはカロリーオーバーなのが残念なんだけど。
本当に、キョウって偏った完ぺき主義者。

心も身体も温まる和食に舌鼓を打つ。

旅番組のレポーター並みに、アレが美味しい、コレも美味しいと言って私が料理を頬張るのを、キョウは自分も食事を取りながら嬉しそうに見ていた。

そこまでは、いつもの幸せな食卓。

ええ、そこまでは。


その隣で、赤ワインを飲みながら、血の滴った生のブリに齧りついている吸血鬼が居なければ、完璧なんだけど。
すごく残念。

あ、いえ。
私が拾ってきたってことは、今となっては深く深く。
海より深く反省してるから、誰か、助けてっ!!