ふわり、と。
重力に反して体が持ち上がる。

私はキョウの首に手を回す。

このまま、連れて行ってくれればいい。

まだ、短いと言ってもいいここでの人生を、心の中で反芻した。

……サヨナラ、パパ、ママ。

ぎゅっと瞳を閉じる。

でも。
パチリ、という音はならない。

「キョ、ウ?」

そっと目を開ける。

おや、と。
キョウは紅い唇にいつものように艶やかな笑みを携える。

「そろそろ、ハーブティーが効いて眠っちゃったんじゃないかと思ったんだけど、違ったみたいだね」

低い声は、耳に馴染んだいつものもの。

「行かないの?」

「イヤだなぁ、何度言わせれば分かるの?
っていうか、アレ?
ユリアって案外女王様気質で、何度だって同じことを言わせなきゃ気がすまないタイプ?」

「いいえっ」

どういう種別ですか、それ。