バンっと。
テーブルを叩いて立ち上がる。

これがちゃぶ台だったら、昔のオヤジみたいにひっくり返していたかもしれないけれど、ちょっと重くて無理そうだし。

それに、もう。
頭に血が昇って冷静でなんていられなかった。

「ふざけないでよっ。
ずっと傍にいるって言ったじゃない!
私の記憶だって消さないって言ったでしょ?
どうしてそんなに心にもないこというの?」

こんなにヒステリックな声が出せるなんて、自分でも知らなかった。

必死って言うのは、怖ろしい。

キョウは面白いものを眺める目つきで私を見上げる。
そして。
すくっと立ち上がった。

当然、今度は私がキョウを見上げなければ、視線なんて絡ませることが出来ない。

「ユリ……」

綺麗な指が頬に伸びるのを、私は跳ね除けた。

びしり、と。
私の手がキョウの指を叩く音が、緊張感漂うリビングに響く。


「冗談じゃないわよ。
キョウは確かに言ったじゃない。
マドンナ・リリーの生まれ変わりはもう待たないって。
言ったよね?
それとも、あれが嘘?」