「それに。
キョウは私を取り戻してくれるんじゃないの?」

イヤだよ。
どうして、「ジャックを選べば?」って顔で私を見てるの?

ねぇ、キョウ。
変じゃない?

「そりゃ、ユリアがそう願えばね。
でも、さっきの仮定の話ではユリアもジャックを好きってことになっている。
俺はね、ユリア」

そこで、キョウは言葉を切った。
無表情を装っていたその顔の、黒い瞳に、切なさと形容して差し支えないような揺れた色が浮かんだ。

「マドンナ・リリーが望むことは、何でも叶えてやるって決めてる」

まるで、私とマドンナ・リリーは別人ででもあるかのような口調だ。

「彼女が他の男と幸せに暮らしたいって言うなら、全力でそれをサポートする。
今までそうしてきたように、これからだって」

また、言葉を切る。
そして。

ふわり、と。
まるで羽毛の重さしかないように軽く、儚い笑みをその美しすぎる顔に浮かべて見せた。

その表情を見ているだけで、こっちの心臓がぎゅって、痛くなっちゃうくらいの辛そうな笑み。

「そうするよ、ユリア」

……な、何言ってるの?