「でもさ、ユリア」

静かに言って、視線を戻す。
ウェーブの効いた黒髪が、さらりと揺れた。

「それは、『私がモテるのは美人だから。それだけのことでしょう?』って、伏目がちに、でも、きっぱりと言い切る高飛車なお姉さんと大差ないんじゃない?」

……今、視線を逸らしたその隙に、頭の中でどんなショートドラマを見たんですか?
と、突っ込みたくなるような例え話。

でも、言わんとせんことは分かったので唇を閉じる。
そして、頭の中で考えを纏めた。

理由は何であれ、逢った時からジャックは私に気があった。
キョウは最初からそれに気がついていて、しかも、当然のように私もジャックの想いを知っていると考えていたうえで、色々と阻止しようとしたけれど。

……結局。


あれ?

そうなると、ねぇ、もしかして。

私はよからぬ考えに行き着いて、キョウを見つめる瞳をふっと曇らせずにはいられなかった。

「今度は、何の面白発言?」

つまらなそうな低い声で、キョウが問う。


「私って、もしかして、ジャックを選んだってわけ?」

ふぅ、と。
キョウは深いため息をついた。

「ユリア。浮気が見つかった後に、いくらなんでもそこまで下手な言い訳をするヤツは居ないと思うんだけど……。
それとも、その発言には、俺が思いもしないような、深い意味でも隠されているワケ?」

氷のような冷たい瞳が、私を射抜く。