キョウは私の態度なんて歯牙にかける様子も無い。

むしろ、これからツマラナイ推理を披露しないといけない羽目に陥った、哀れな名探偵のような顔で私を見た。

「アヤカだったっけ?
ユリアが逢う前日に、吸血鬼に噛まれたって騒いでいたのは」

こくり、と頷く。
私、キョウにその話をしたかしら……。

いやいや、彼は過去見が出来る男だ。
気にせずに先を促す。

「でも、アヤカは一人で家に帰ったんだよね?
翌日、ユリアが公園で出逢ったのは猫の形の吸血鬼。
ま、それはいいや。
ジャックは当時、自分の力で姿を変えることは出来なかったんだから。
ヤツはユリアにも噛み付いた。
その上、家についてきた。
……ほら、ね?」

これ以上何を言えというのか、と言わんばかりの強気な笑みを口許に浮かべている。

アヤカのことは血を吸った挙句気に入らなかったけれど、私には家までついてきたくなった……って、そう言いたいってこと?

「でも、ほら。
私は悪魔を引き寄せる力がある……のよね?」

「そうかもねぇ」

いつかそう言ったじゃない。
そら惚けた表情をわざと作って、日がとっぷり暮れたベランダに視線をやってみせるのは、何の芝居かしら。