「ねぇ、嫌じゃないの?
私が他の男に歯を立てられて平気なの?」

キョウは楽しそうに笑う。

「だって猫なんだろう?
俺、ユリアが猫に手を舐められたくらいで嫉妬する了見の狭い男じゃないよ」

いや、いいです。
突然そこで心の広い男を装わなくても結構です。

「私、拾ったところに戻してくる!」

「嫌だよ、寒いのに」

ソファにのんびり座って、しれっと言いやがる。くー、猫のクセに生意気な。

「なんでよ。猫の姿に戻ってよっ」

「無理なの」

「え?」

私は首を傾げる。

「自由にならないんだー、この身体。
僕、猫と吸血鬼の混血児でね。
だけど、ちょーっと不便なことに、どっちの姿も自分の都合では変えられないの」

僕って大変、と、不幸の人ぶるのは止めていただきたい。