「どっちみち、今日決めるべき話じゃない。
そんな顔、するな」

それから、ふっと、別の方に視線を向けて言った。

「今日、ここで結論が出たら続編が見れなくてつまらない、だろう?」

それは。
まるで架空のカメラにでも向かっているような、真っ直ぐな目線。
口許に浮かんでいるのは、見えない観客にでも向かって語りかけているような柔らかい微笑。



……も、もしかしてっ

「やっぱりこれって、ドッキリなんじゃないの?」

キョウに逢った時から、ずっとずっと心のどこかに引っかかっていた。
ドッキリ疑惑。

ついに、私は、我慢できなくなって口に出してみる。

「……は?」

キョウは私に視線を戻し、やがてくつくつと喉を鳴らして笑い出した。

「こんなに長いドッキリ、誰に見せるのさ、ユリア。
それに、間違いなく地上波NG映像ばかりじゃない。
ああ、どこかのポルノビデオ?
だとしたら、相当高値で取引してもらわないと割に合わないな」

こんなに面白い発言、聞いたこともないくらいの勢いで、キョウが笑うので私は赤面してしまい、どうしたら良いのか分からない。

だいたい、ポルノビデオの隠し撮りしてたら、ドッキリじゃなくて、犯罪じゃない!

っていうか、どれだけ高値で取引されるとしてもお断りなんですけどっ。

「じゃ、何に向かって言ってたのよ」

「××が見てるであろう、鏡」

神様が見ている、鏡に向かって呟いた……ってことなのかしら。私はそう理解する。