「イヴも終わったことだし、そろそろ日本に帰る?」

あからさまにつまらなそうな私に気づいたのか、キョウが問う。
こくりと、頷こうとした刹那。

「お客様、ラッキーキャットは不要ですか?」

耳に馴染んだ声がした。
私が振り向くより早く、キョウの手が私の手を掴む。

すぐそこに、相変わらず儚く微笑むジャックが居た。

「Merry Xmasって言い損ねたの、思い出した」

「そうね。もう、当日になっちゃったんじゃない?」

時計は見てないけれど、恐らくもう日付は25日に変わっているに違いない。

「いいよ、一生分言っておけば。
これで最後なんだから」

そっけないキョウの言葉に、ジャックのブルーサファイアの瞳が曇る。

「もぉ、どうしてそんな意地悪なこと言うの?」

目を吊り上げる私に、キョウは淋しげな色の瞳を向けた。

「それは俺の台詞だね」

「どうしてよ。
ジャックに逢うって言うのと、キョウと逢わないって言うのは同義語じゃないじゃない」

再び。
二人の間に、緊張感が張り詰める。