キョウは肩をそびやかす。

「本当、ユリアは疑い深くて、我が侭だね」

「誰がっ……」

反論しようとしたら、もう一度強く抱き寄せられた。
息をするのも苦しいほどに。

そ、その力は反則じゃありませんか?

「こんなユリアの相手が出来るのは、俺くらいしか居ないだろう?」

強気な言葉も、そっと囁けば脳みそを震わせるような優しい甘言になるのね、と。
上手く働かない頭で判断する。

「何よ、それ」

「だから、もう変な男拾ってこないで」

「ジャックは猫だったじゃない?」

少なくとも、最初は。
キョウは緩やかに瞳を細める。

「あれが猫にしか見えないなんて。本当にユリアは人間なんだね」

……えーっと。今の今まで私のことを、何だと思ってらっしゃったんでしょうか?

「当たり前でしょっ」

声高に言った私を見つめる瞳に、傷ついた色を浮かべるのはずるいと思う。

そうよ、ずるいわよ。
勝手に、千年待って。
勝手に、神様と取引して。
一人で、苦労を背負って。

そうまでして手に入れたのが、こんな私で良いのかしら?