「あれ、ユリアは俺の頭の中、読めないの?」

口許に笑顔を携えてキョウが問う。

「……例えば?」

キョウはその形の良い紅い唇を私の耳元に寄せて、テレビなら絶対にピーっていう甲高い音が入るに違いない言葉を囁いていく。

「それは、読めなくてもいいと思うんだけど」

頬を朱に染める私の耳元で、楽しそうに
「本当に照れ屋なんだから」
って笑ってらっしゃいますけれども!

その言葉をダンディな声で耳元で囁かれ、平然としている人が居たら目の前に連れて来てください。

「それに、特別な読心術なんて使わなくてもユリアを見ていれば手に取るように分かる」

「……ば、バカにしてんの?」

思わず声を荒げる私に向けられたのは、千年分の愛しさを強引に詰め込んだとしか思えないような、黒真珠のような艶やかな瞳。

「愛してるんだよ、分からない?」



分かるとか、分からないとか。
そういう次元では、無いような気もするのだけれど。

突然降ってきた衝撃的且つ高圧的な愛の告白に、堪えようの無い眩暈を覚えてそのままキョウの胸の中に顔を埋める。

「だから、そんなに萎縮しないで?
俺の全てはユリアのために存在しているんだから」

こ、これはクリスマスが私に見せている、長く甘い夢なのかしら。
サンタクロースのプレゼント?

でも。
顔をあげればそこに、今ではよく見知ってしまった顔の良い魔王様が、魅惑的な笑みを携えて居るだけなのだ。