テーブルの上に飾られている花が、マドンナ・リリーで驚いた。

ビンの中で揺らめくキャンドルが美しい。
食前酒で乾杯し、リンゴの前菜に舌鼓を打つ。

タイミング良く運ばれてくる料理のどれもこれもが絶品だった。
しかも、私の料理は明らかに量が少ない。

食べきれないことに配慮した、こういう心遣いが嬉しかった。

久しぶりの会話は小気味の良いテンポで弾む。


キョウは容姿だけでなく、その、食事をする仕草一つ一つが絵になるのだ。

私の視線に気づいたのか、食後のコーヒーを飲み終わったキョウは、カップを置いて柔らかい眼差しで包み込んでくれる。

「いい加減欲情した?」

……いやいやいや。

「欲情した目じゃない……よ?」

「そう?」

だったらいいけど、と、肩をそびやかす。
それから、ああ、と。

ポケットに手を突っ込んだ。

「待ってたのかな、コレを」

小さな箱から取り出されたのは、いつかデパートで買ってくれた指輪。

テーブルの上が全て片付けられた後、キョウは私の左手をとって、魔界の指輪を抜き取った後の薬指にその指輪をつけてくれる。

指輪なんて。
そう、魔界の指輪ならずっと付けていたって言うのに。

このシルバーの輝きにことさらに胸がときめいてしまうのは、クリスマスマジックかしら?