着いたのはMGMグランドホテルの程近く。

「お腹、空いた?」

Yes以外の返事を受け付けないような高圧的な態度で、それを聞く?って思ったけれど。ブランチ以降何も口にしていない私の空腹は確かにピークだったので、こくりと頷く。

「それは結構」

キョウはすたすたと歩き出す。
私は慌てて後を追った。

だって、このまま置いていかれたら不法入国、不法滞在でアメリカ合衆国に訴えられちゃうじゃない。

焦る気持ちを知ってか知らずか、キョウはペースを緩め左腕を僅かに浮かせる。
私は遠慮なくそれに右手を絡めた。

だぁって、じゃないとさっきから無遠慮にキョウに視線を送っているそこの日本人観光客に取られちゃいそうなんだもんっ。

「あれ?
ジャックを探しに行かなくてもいいの?」

皮肉を含んだ低い声が降って来る。

「行くなら一緒に行く」

「これ以上の面倒ごとは御免だ」

キョウが、ぽつりと呟いた。

……そうだった。
  キョウは私のせいで、また、千人消さなきゃいけないんだった。

千人。
改めて意識した途方も無い人数は、私の心を塞ぐ。

「……ごめんね、キョウ」