あーあ、と。
つまらなそうなため息を一つ、キョウがついた。

「だからあれほど、アレを拾うなって言ったのに」

……それはいつの話でしょうか?
いまさら今月初旬の話を蒸し返されても困る私は唇を噛む。

キョウは紅い唇をそっと私の頬に押し当てた。

「俺がユリアに敵わないって知っててわざとやってるでしょ?」

耳元に注ぎ込まれるのは、不機嫌を優しさで強引にコーティングしたような、低く艶やかな声。

むしろ、私がキョウに勝った出来事が一つでもあるなら、それを教えていただきたいんですけどねぇ?

「まぁ、ラッキーキャットだから仕方ないか」

最後は独り言のようにつぶやくと、ふわりと私から手を退け口を開いた。

「吸血鬼の平均寿命は700年だったっけ」

「そう」

つまらなそうに神様が答える。

「それで手を打つ?」

キョウの言葉に、ジャックが弾かれたように顔をあげた。
今にも泣き出しそうなブルーサファイアの瞳が痛々しい。

「いいんです、キョウさん。
もうこれ以上ご迷惑をかけるわけには……」

キョウは黒髪をくしゃりとかきあげた。

「迷惑ついでだよ、どうせこっちで暮らすんだろう?」

そう言ってから私に視線を移す。

「さすがにジャックと暮らしたい、なんて言わないよね?」

私はこくりと頷いた。
っていうか、そんな鋭い眼光で睨みつけられて、頷く以外に答える手段があるのならば、教えて欲しいんですけど!