だから、私はもう、ジャックに聞くことが出来なかった。

――本当に、eternal life(永遠の命)なんて欲しいのかって。
  考え直す気はないのって。

でも、死後の世界が延々と続くのなら、現世でeternal lifeを得る事と大差ないのかもしれない。
なにせ、世界の仕組みがちっとも見えてこないので冷静な判断が出来ないのだ。

「本当にジャックのこと、好きじゃないの?」

耳元に低い声が降って来た。

「私が好きなのはキョウだけよ」

与えられた台詞をこれしかもっていない役者のように、繰り返す。

「そう?
じゃあ、その心配そうな表情は何?」

キョウは納得しかねるようで、手入れの行き届いた剣の切っ先を喉元に突きつけるような勢いで私に質問を重ねてくる。

「好きじゃない人のことは心配しないの?」

「しないね」

……か、会話が終わってしまいましたけど。
  この、冷酷冷徹な悪魔め!

「人間はね。
好きじゃない人の心配までするんですっ」

もっと正確に言えば、ジャックに対しては友達に抱くのと同じレベルの親近感を遠の昔に抱いているのだけれど、それをキョウに上手く説明できる自信はなかった。

「で、そろそろ儀式を始めても?」

神様なら、私たちの許可なんていらないんじゃないの?

どうしたら良いのかちっとも分からなくて、私は瞬き一つ出来なくなっていた。