「ユリアちゃん、それは僕の望みだよ」

涼やかな声でジャックが、心配しないでと暗に告げてくる。

「数日早く献上して、猫の姿で過ごしていたんだけど。
ユリアちゃんのお陰でほら、千人目の人助けが出来たから。
これで夢が叶うんだ」

「でも、永遠だなんてっ」

辛すぎるわ。
いくら、人間界と魔界の時間の流れが違うって言ったって。

「ユリア、人の決心にケチをつけるもんじゃない」

うーん、私の傍で珍しく魔王様が正論を仰ってはいますけれども。

「でも。
どうしてよ、どうして永遠の命なんて」

ああ、もう。
と、うざったそうに金髪をかきあげて神様が鋭い視線で私を射抜いた。

「リリー。
明日死ぬのと、永遠に生きるのとどっちがいい?」

「そんな究極の二択、気に入らないわ」

「ほぉ」

神様が形の良い瞳をすぅと眇めた。
や、ばい。
呪いがかかる前に寿命が磨り減りそうだわ。私の。

そのくらい、何かを抉るような鋭い眼差しに息を呑む。
私の肩をキョウが抱いていなければ、間違いなく後ずさっていた。

「リリー。
いずれ転魔するなら、もう少し私に敬意を払ったほうがいいんじゃないか?」

槍のような言葉が遠慮なく飛んできて、ぐさりと致命傷を負わせていく。