「それに、しばらく彼女は魔界に連れて行きません」

……へ?
一方的な宣言に目が点になる。

「そんな愛を見せ付けられてもねぇ。お好きにどうぞ、くらいしか言えないよ?」

神様が呆れ気味に肩をそびやかした。

「ダメですよ。誰が首謀者だったのか見つけて報告していただかないと困ります」

「死んで消えてしまったものをどうしろと?
人間界の神と掛け合えって言うわけ?」

神様は不機嫌に口を開く。

……やっぱり、人間界にも神様はいるのね。

「もっとも、私と話し合う前に当の彼女と話を纏めたほうがいんじゃないのか?
90度に曲がりそうなほど首を傾げているぞ」

そ、そんなに不自然な角度には傾げてませんけど?
私は慌てて傾けていた首を真っ直ぐに戻す。

ぽんとキョウの手が私の頭に乗る。

「ユリアは心配せずに着いてくればいい」

「……ど、どこに?」

むしろ、その発言が一番心配なんですけど?

「ほら、既に交渉決裂じゃないか」

神様が綺麗な顔を歪めてあざ笑う。
真に綺麗な顔って、どこまで歪めても綺麗という範疇からは出ないことに気づき、私は心の中で舌を巻いていた。