着替え終えて部屋のドアを開く。

開けた瞬間、即効でドアを閉めた。

……えっと。
今、そこにダビデ像を髣髴とさせるような均整の取れた裸体を一つ見かけたんですが……。

「ユリアちゃん☆
襲わないから出て来てよ」

ドアの向こうで柔らかい声。

「バスローブ、着てください」

私は、それとは間逆の酷く尖った声でそういうのが精一杯だった。
出なきゃ、悲鳴を上げてしまいそう。

あれよ、あれ。
東京都迷惑防止条例とかに絶対に引っかかるって!この人、もとい、この吸血鬼!!

「キョウーっ」

私はドアを開けずに、そこからキョウを呼ぶ。
もういい。
賭けなんてどうせ負けたんだし。

いいわよ。こうなったら、とことんめくるめくクリスマスとやらを堪能してあげようじゃないの!!(自棄)

私は腹を決めて彼の名を呼んだ。

「ユリア、ゴメン。今ちょっと手が放せないんだ。
この絶妙なタイミングを逃すと、ブリの臭みが抜けなくって」

……ええ、ええ、そうですよね。
今、料理中でしたね。
完璧な料理を作りたいタイプですものね、このお方。

私は部屋の中で、がくりと頭を抱えた。さっきの決心さえ揺らぎそうな気の抜けようだ。

それでいいのかしら。
あなたの奥さん、どこぞの裸体の魔物に襲われかけてらっしゃいますけど。