まままままま、まさかっ。

ごくりとラスベガスの冷たい風ごと息を呑む。
そういえば、あの時買ったマリッジリングだって貰ってないし。

でもでも。
結婚式はやっぱりあの、白いウェディングドレスが着たい、わよね?

「……いつまでそうして百面相やってんの?」

キョウが楽しそうにクツクツと笑い、パチリと手を鳴らした。

「お呼びですか、魔王様」

スーツを纏ったジュノが芝の上に跪いていた。
こうやってちゃんとキョウの部下として振舞っているジュノを見るのは久しぶりで、なんだか不思議な気さえした。

そうそう、彼も本業(?)はホストなんかじゃなくて悪魔なのよね。

ジュノは周りを見渡すと、「ご無沙汰しています」と丁寧に神様に頭を下げた。
その怯えぶりからも、神様の存在がただならないものだということが私にもひしひしと伝わってきた。

「それで、ここは何なんですか?」

ジュノが唇を開く。うん、普通の疑問を抱く人が居てくれて助かるわ。

「教会」

ジャックはつまらなそうに呟いた。
きらりと、おもちゃを見つけた子供のようにジュノの瞳が輝いた。

「もしかして、お二人ついにけっ……」



「おいで、ユリア」

ジュノの言葉を遮るとキョウが手を伸ばしてきた。その手を条件反射的に掴んでしまう。

えーっと、何処に、何をしに、かな?

本当に結婚式――?