くらり、と。
キョウの胸の中に倒れこむ。

途端、ほぉというため息が束になって耳に注ぎ込まれた。
それがどこから聞こえてきたのか気になって、私はふらつく頭を抑えて瞳を開ける。

驚きのあまり、引いていった血の気が一気に戻ってきたわ。
だって、歩道を歩いていた人たちが、皆して立ち止まってこちらを見ているじゃない。

「あ、あの。
とてつもなく注目浴びてるんですけど」

「なんだ、今頃気づいたのかリリーは。
それに、神様なんてものはいつだって注目を浴びているもんなんだ。
それをいまさらどうしろと?」

ちょっと、神様!本気で首を捻るの、辞めていただけますか?

「そうだよ、ユリア。
人なんて皆こっちを見る生物じゃないか」

キョウが不思議な顔をしてそう言った。
ジャックもまるで異存はないらしい。

……そっかぁ。
  綺麗な容姿を持って生まれた人たちって根本的に思考回路が違うのね。
  キョウが人の視線を気にしないのにどういう理由があるのかずーっと謎だったんだけど。
  そういうもんだと思ってた、とは気づきませんでした。

私の方が正常なんだろうとは思うんだけど、さすがに3対1(しかも内お二方は神様と魔王様)、まるで勝てる気がしない。

「とりあえず、ほら。
ホテルの部屋とか、せめてどこかのレストランとか。
ね、入ってゆっくり喋るといいと思うの」

こうやって路上に立ち止まって、皆の足を止めるよりははるかにずっと。