「そんなに怒らないでよ、ユリア。
俺が夕食作ってあげるから、着替えておいで」

うー。
キョウの作る食事はスペシャルに美味しいから、それはそれでいいかって思っちゃう。
料理上手って得ね。

「ものすっごい和風が食べたい」

「それは良かった。今日、美味しそうなブリが入ってたんだ。
ブリ大根作ってあげるね」

そこだけ聞いていると、可愛らしい新妻を思わせるような優しい台詞なのに。
はぁ。

私はとりあえず着替えのために部屋に向かう。セーラー服の何がこう、男の気持ちをソソるのかまるでわかんないわー。

……図々しくも一緒に付いてきた黒猫をひょいとドアから放り出して、部屋に鍵をかけることも忘れなかった。

なんなんだろう……。
アイツもまた、エロキャラなんだろうか……。

どっと疲れが増してくる。

そこらへんの芸能人よりずっとかっこいいんだから、外に出てその辺のお姉さんに媚びたらきっと上手いこといくと思うんだけどなぁ。
ああ、私が拾ったのがいけなかった。

少し反省。

そうだ!今から公園に捨てに行こう。
それがダメなら、綾香の家に送り届けてやろう。

うーん、我ながらいい考え。
善は急げって言うしね。

……鏡に映った左の首筋に、遠慮なくつけられたキスマークを発見。

私は慌てて、一度着たチュニックカットソーを脱ぎ捨て、タートルネックのセーターとジーンズに着替えなおさなければならなかった。