「ジャック、どう思う?」

私はテーブルの片隅に置いている、ピストルモチーフのネックレスを首輪代わりにつけた黒猫に問いかける。

もちろん、そいつが答えてくれるはずもなければ、にゃぁとも言わないんだけど。

あんなにクリスマスを心待ちにしていたはずなのに、もう、クリスマス・イブなんて後数時間で終わっちゃうじゃない。

まさか、あのテレビ、日にちを間違えて12月25日の話です!なんて言ったわけじゃないわよね。

「あれ?
ジャックには問うのに俺には聞いてくれないんだ。
ショックだな」

全く持ってショックとは間逆の口調で紡がれる、低い声にびくっとして顔をあげる。

「ただいま、ユリア」

いつ?
いつからここに?

私は目の前に黒いスーツ姿で立っているキョウを見て、目を丸くすることしか出来なかった。

私の視線だけで言いたいことを理解したのか、キョウが口を開く。

「今だよ。
本当、今しがた。
待たせたね。やっぱり面倒だなー、社長業なんて。
ほら、ユリアのママに嘘を吐き続けるのも心もとなかったんで、この際本気で社長を目指してみようかと思ったんだけどさー。
やーめた。
ユリアと一緒に過ごせないんじゃツマラナイからね」

からね、なんて言い捨てて遠慮なく私を抱き寄せる。

「あれ?ユリア。
淋しかったー、とか。
愛してるー、とか。
ないの?」

きょとんとしている私に整いすぎた顔を近づけ、からかうようにくすりと笑ってそんなことを聞いてくる。

な、なんなのよ、この男!
むしろ、あれだけ放っておいて私が心変わりするんじゃないかとか、思わないわけ?