「ねぇ、これ煩いんだけど」

と、ジャックがつっけんどんに目覚まし時計を突き出してきた。

あ、消すの忘れてた。

「ゴメンゴメン」

私はうっかり受け取ってそれをオフにする。

……っていうか。
  本当にこれでいいのかしら?

「あ、あの。
昨夜、何も無かったわよね?」

「昨夜?
ユリアちゃんが慣れないお酒に酔い潰れてたけど」

「そ、そうね。
それだけよね?」

「多分ね。
僕が帰ってきたときには幸せそうな顔して眠っていたから、その間何があったかは知らないけど」

冗談でもなさそうに、ゆったりとジャックが微笑みを浮かべている。

「そ、そう」

何か幸せな夢でも見ていたのかしら?
心当たりは無いけれど。

「ねぇ、あと一つだけ質問してもいい?」

「百個質問してくれても構わないよ」

耳に心地良い柔らかい声。