「だけどさ。
そんなの気にせずヤっちゃったら、ユリアだって記憶を取り戻せると思わない?」

耳元で、悪魔が囁いた。

……悪魔。

どうしてそんな単語をすぐに私は思いついてしまったのかしら。
頭痛と疑問が同時に過ぎる。

考えすぎちゃ駄目なんだった。

でも。
何故だか本能が指令をくれた。

悪魔の蜜言に流されてはいけません、と。

「……思いません」

私はなんとか残り少ない理性をかき集めて、唇を動かした。

「うーん。
ユリアはやっぱり、ユリアだねぇ」

感心したように、ソイツが呟く。

そうして。
もう一度、甘い。
でも、触れるだけのキスを落とした。

「クリスマス、楽しみに待ってるね☆」

眠る直前に耳にしたその声は、サンタを心待ちにする子供を思わせるような、無邪気なものだった。