「見合い?」

キランと。
噂好きの笑麗奈が瞳を輝かせたのは言うまでも無い。

「うん」

綾香が小声で言って、こくりと頷いた。

「どんな人?」

「それがね……。
写真なんて見せてくれないの。
でも、パパと同い年くらいの……その……
お金持ちなんだって。
私がその人と結婚さえすれば、全て上手く行くって言うから。
もう、しょうがないのかな……。
パパ、自殺しちゃったし……」

急に。
空気が重くなる。

しょうがないわけないよ!って、簡単に声を掛けてあげられたらどんなにいいだろう。
人の弱みにつけこんで、何をしようって言うのかしら。

私はまるで自分のことのように胸が苦しくなった。

胸が……苦しい……。

「ユリアちゃん?」

耳元で聞こえるのは、ジャックの声。

意識が、ぼう、とする。
急性アルコール中毒って、こんな感じなのかしら。

「ユリアちゃん、歩ける?」

それから、トイレで。
ジャックが私の喉の奥に指を突っ込んで吐かせてくれるという、なかなか出来ない体験をすませ。
私はぐったりと寝込んでしまった……

のだと思う。

残念ながら、この夜の私の記憶はすこぶる曖昧で、これ以上はお話できそうにないのです。