「私がハマっているホストの名前」

私より先に答えたのが綾香だった。

「へぇ、もしかして百合亜もホストクラブに通ってるわけ?」

「まさか。
たまたま、知り合いがホストをやっていたの。
それだけよ」

「ふぅん。
たまたま知り合いがホスト、ねぇ」

人の言葉を鸚鵡返しして、睨んでみせる。

ま、でもこればっかりは事実だから仕方が無いわ。

そうしたら、三秒空けて、ねぇ!と。
笑麗奈が極上の笑みを浮かべてきた。

「今日、逢いに行きましょうよ、そのホストさんに」

「え?」

私は眉を潜める。

「駄目だって。
綾香にお金使わせる気?」

「あら、お金くらいいくらでも私が出すわよ」

時折こうやって、デリカシーの無さが滲み出るのが笑麗奈の欠点の一つ。
だけど。
綾香は大して気分を害したようでもなく

「え、エイイチロウさんのところに連れて行ってくれるの?」

と。
むしろ笑みすら浮かべていた。

まぁ、綾香の気分転換になると言うならそれもいいか……。

私は諦めて、待ち合わせ時間を決めることにした。