笑麗奈は清楚な顔に似合わず、大阪のおばちゃん並に噂話が大好きなのだ。
もっとも、笑麗奈に言わせると、私の噂話への興味の無さのほうが<女性にあるまじき行為>なんだそうだけど……。

そうなのかしら?

「そうなのよー」

フランス人形がふわりと微笑む。

「これがまた、大変らしくって☆」

ええっと、表情から溢れてますよ?
他人の不幸は蜜の味って感じが。

「綾香のお父さん、自殺していたらしいのよ。
で、その借金の連帯保証人になっていたのがお父さんの弟でね。
綾香をウリに出そうって企んでるらしくって。
綾香は逃げ出したいんだけど、お母さんが入院しているからずっと逃げているわけにもいかないみたいでねー。
すっごく塞ぎこんでるわ」

く、詳しい。
これ、噂話でなく本人から聞きだしましたね?

「なんだか、ドラマみたいね」

「本当よ。
私なんて家に帰ってパパに借金ないか、保証人は誰か確認しちゃったもん」

……しっかりしすぎてますが、こちらのお方は。

「百合亜も他人事じゃないわよー」

笑麗奈が声を潜めて私に囁く。
その瞳はとてつもなく真剣だ。

「そ、そうね。
気をつけておくわ」