三人が出て行ったのを見計らったかのように、別の気配が現れた。

「失敗失敗。
私としたことが」

澄んだ声には聞き覚えがあった。
神様と名乗る金色の長い髪を持つ美人な、そしてあまり関わりあいたくない【あの人】のものだ。

「日本国内にしか忘却の術をかけていなかったようだ。
リリーをさらに混乱させてしまった。
そんなに怒るなって。珍しく私自ら出向いてきてやったんだから、感謝されてしかるべきだと思うぞ。
リリー、いつまで隠れているつもりだ?」

最後の一言は、やはり私に向けられたもの……なのかしら。

だいたい、リリーって何よ?
私の愛称勝手に付けないでっ。

私は仕方がなく、ゆるゆると毛布から目を出した。
青みがかったグレーの瞳が、楽しそうにこちらを見ている。

「あの、隠れていたつもりはなくって。
頭が割れそうに痛いんですけど」

その圧倒的な存在感を前に、思わず言い訳している自分が居た。
情けないっ

神様はつまらなそうに唇を尖らせる。

「何それ。皮肉?」

ぶるぶるぶる、と。
本能に従って私は激しく首を横に振る。
何故かこの変人の機嫌を損ねることだけは赦されない様に思われるのだ。
特に根拠はないのだけれど。