私の質問がお気に召したのか、ママは得意そうに頬を緩めた。

「それが、ベガスでパパのお友達に借りたんだけどね。
黒い毛並みの良い子猫ちゃんのぬいぐるみなの。
これを抱いてゲームをするとね、まず、間違いなく勝てるのよ。
すごくな~い?」

ええ、凄いと思います。
年齢を省みないそのテンションの高まり具合はむしろ、娘の私から見ても尊敬に値するほどです。

ママはまるでファッションショーのモデルさながらに、ミンクのコートを着たままぐるりと一周した上にポーズまで決めてみせた。

本当に、パパはこの人との結婚を一度も後悔したことが無いのかと問い詰めたくなったのも無理はないと思って欲しい。
でも、パパはメガネの奥に微笑を携えて拍手しているのだから、まぁ。

もういいや。
実の親子といえども共有できない領分があるに違いない。