こ、これは……。

夢、そうよ、夢なのよね。

きっと。

起きたら全て元通りになってるんだわ。

いつもの部屋で目が覚めて、出来立ての朝食を食べるのよ。
美味しいコーヒーの香りが部屋に漂っていて……


あれ?

私は首を捻る。
笑麗奈は私は「一人暮らしをしている」って言ってたわよね。

じゃあ、いったい誰が朝食を作ってるのかしら。

私?


何かが、脳裏を過ぎった。
黒い、そう。
何かが。


途端。
ずきりと、耐えられないような頭痛が頭を駆け抜けていく。

「キョウ、駄目だ。
これ以上混乱させるとリリーが壊れる。
まぁ、私にとっては願ったり叶ったりなのだが……」

涼しい声が聞こえ、それと同時に『何かに抱きしめられているという感覚』が消えていった。

微かに、言葉も付けられないような、甘く痛むような感覚だけを私の胸に残して。