「キョウ?」

そこだけ、かすかに胸が痛むが、また頭痛が起きはじめる。
鎮痛剤に手を伸ばした私の手を、ふわりと神様が触った。

なんていうか、すべっとしてとてつもなく柔らかい肌ですね、この人っ!

「薬飲むの、もうちょっと我慢してくれないかなぁ。
今、隣でキョウが煩くてね。
どうしても君と喋りたいって言うんだ。
いい加減、マドンナ・リリーの幻影を追うのなんて止めればいいのにね。
いくら魔界に他に楽しみが少ないからって、そういう時間の潰し方ってどうかなぁと思わない?
だいたい、女なんかを抱くぐらいなら私と関係を持ってくれればいいのにねぇ」

……な、何か変なことをさらさら〜と仰ってますけど。

「それにさ。
マドンナ・リリーなんてどうせ輪廻転生していくんだから……」

そこで、言葉を切って左……私から見たら空気しか見えない空白のスペース……を見て、「ちょっと待ってよ、今説明してるんだからさ」とため息を吐いて見せた。

これはなんていうか。
一人芝居の練習か何かかしら?

その人は私の方を見て、またもやふわりと微笑んだ。

「どこまで話したっけ?そうそう。輪廻転生していくんだからさ、別に君に固執する必要はないと思うんだよね。
君の命が82歳までだと仮定しても……いや、これは仮定という名の現実なんだけどね、私は神様だから人の寿命なんて簡単に分かるんだよ、どう、凄い?……ほんの一瞬のことじゃないか。
待っていればまた、次のマドンナ・リリーに逢えると言うものだ。
それはそれで結構なお楽しみじゃないか。
そうは思わないか、リリー」

……私は目が点になって、言葉も出ない。

こんな一人芝居じゃ、きっと観客もついてこれないと思うわ。

なんていうか、前衛的過ぎて。