「なんだか、思い出せないことが多すぎて。
頭が痛むんですけど」

「突発性記憶喪失かしら?
怖い思いをしたときの、防衛本能みたいなものね。
徐々に思い出すこともあるから、あまり固執しすぎないほうがいいわよ。
もっとも、私は外科だから。
明日にでも精神科医を尋ねてみるといいわ。
眠れないようなら、鎮痛剤を飲むといい」

はきはきと、完結に思ったことを喋る人だ。
鎮痛剤を渡してくれた。

私はなんとなく心安い気がしてほっとした。

「私……明日には退院できますか?」

「いや、かなり出血していて。
一応縫ってはいるのだが、様子が見たいから数日間はここに居てもらうことになるだろう」

「そう、ですか」

「なにせ、一週間も寝ていたのだからね」

!!

言われて、私は顔をあげた。

「あの、今日は何日なんですか?」

「12月14日。
あ、私はどうせ仕事だから、後10日でクリスマスイブだね、なんて洒落たことは言わないよ」

そういうと、どことなく照れた感じで女医さんが僅かに笑って見せた。

私もつられて笑ってしまう。

くすりと、軽く。