心臓がばくばく言って、とっても煩い。

だって、キョウは私以外の全ての人にとてつもなく冷たい。

さっきだって、転びそうな女性を助けるわけでもなく避けた。

私が、「マドンナ・リリー」の輪廻転生したものでなければ。

私も、同じように彼から冷たい視線を浴びる存在だったのか。

それが、どうしてもどうしても気になって仕方が無い。

キョウは唇を閉じ、困ったように一瞬瞳を伏せ、諦めたように長い睫を持ち上げて切ない色を宿した瞳で私を見つめた。

「ユリア、それってさ。
この時代に生まれてなかったら、私のこと愛してなかったの?って聞くようなものだよ」

「それは、逢わなかったってこと?」

はっきり、言葉が聞きたかった。
オブラートに包んだ、耳辺りの良いうわべだけの説明なんて必要ない。

キョウが諦めたように肩を竦める。

「はっきり言えば、まぁ、そうだな」


そうだよね。

キョウは、遥か昔に命すら投げ出して自分を救った精霊、マドンナ・リリーに逢いたくて、人を探しているんだもの。

そんなの、最初から分かっていたはずなのに。

何故か。

心の奥が切られたように痛かった。

小学校六年生のバレンタインデーで、担任の先生にチョコレートを渡して告白し、当然のように玉砕したときと同じくらい、心の中が痛かった。