「それから、ジャックが資金集めにいったから、中に居るアヤカを家まで送り届けてやってくれる?」

「畏まりました」

ジュノが丁寧にお辞儀をするのを、私は不思議な気持ちで見ていた。

そこまで徹底した上下関係を、まだ目の当たりにしたことがないからかもしれない。

「待ってよ、キョウ。
綾香は家が危ないんでしょう?そんなところに送り届けてどうするの」

「だから、ジュノが送り届ければいいじゃないか。
変な奴らに絡まれていたところを救ってきたってね。
ついでに、ボディーガードなり彼氏なりになって居座れば?」

「畏まりました」

いやいや。
その、軽い思いつきみたいなのに乗っかって本当にいいわけ?

「そんなこといったって。
綾香と口裏合わせるの?」

「いいや。
記憶を弄る」

あまりにも簡単に、さくっとキョウが言うから。
私は思わず二の句がつけなくなった。

「承知しました」

ジュノは丁寧に礼をすると素早くオフィスの中へと入っていく。
その後姿を見つめながら、私は。

軽い眩暈に襲われていた。