「へぇ?
欲求不満だと、こんなに素直になるんだ。ユリアって」

からかうようにひとりごちを言うキョウ。
でも、私はその口車には乗ってあげない。

「だったらどうするの?
ずっと欲求不満にさせておく?」

私の言葉に、キョウは軽くその瞳を眇める。

「そうだな。
そうしてあげたいけど、俺のほうが持ちそうにないよ」

残念、と。
冗談めかして言うと、軽いキスを落とす。

それから、諦めたように苦笑した。



「そんなにアヤカのことが心配?」

「え?」

……そういうつもりじゃなかったんだけど……。

そんなに私が真剣に会話をするのって不自然かしら?
私、普段の行いをもう少し改めたほうが良いのかしら?

急に不安に襲われる。

そんな私の心のうちを知ってか知らずか、返答も聞かずにキョウは私から手を放す。

「分かった。
協力してあげる。何処にいるの、その子」

「わかんない。
だから、ジュノとジャックが探しに行ったの」

キョウは話を聞いているのかどうか、立ち上がると椅子の背もたれにかけていた二人分のコートを手に取った。

「おいで、ユリア」

差し伸べられた手を掴むのは、もう、どうしようもない条件反射。
っていうか、こんな風に魅惑的な表情で手を差し伸べられて、それを掴まない女性というのが見て見たいくらいだ。

そして、出来れば弟子入りさせていただきたい!
師匠と呼ばせていただきます。