「アヤカちゃん、昨夜から帰ってこなくって。
僕、とても心配なんだ。
だから、ずっと探してるんだけど……。全然分からなくて」

悪いこと聞いちゃったかしら、と。
私は肩を竦めた。

ちらりとキョウを見上げると、さっぱり興味のない涼しい顔をしていた。

「ねぇ、キョウ。
ジュノに電話して?」

そういう私を、とてつもなく怖い目で睨むのは辞めて欲しい。
やばいやばいって、その目。
ちょっと!ゴールドになってますけど?

こんなに寒いのに、背中に汗が伝いそうになって私は慌てて言葉を探す。

「あ、だからね。
綾香を探すのに、ジュノから情報が得られないかと思っただけよ?
ね?怒らないで」

何故か、キョウの表情は不機嫌なままだ。
周りの温度を(それでなくても寒いって言うのに)さらに5度下げてしまう、冷たい視線を私に向けてくる。

「あー、分かった。
クリスマスに赤いリボンプレゼントしてあげるから、ね?」

ぞくぞくした私は、慌てふためいて思わず、そんなことを口走ってしまった。

途端。
蜂蜜のように甘い笑みを口許に浮かべるキョウ。

……キョウってば、私の思考パターンをマスターしちゃったの!?

私の心の中で動揺が広がる。

キョウは抱きしめんばかりの勢いで、私に近づいてきた。
そうして、耳元に唇を寄せる。

「やっぱりユリアは可愛いね。
ますます、クリスマスが楽しみになってきた♪」

……綺麗な顔で微笑むのは、とてもとても美しいんですけど、あの。
一体、頭の中でどんな光景見られてるんですか?

アイスクリーム好きの人に、サーティーワンのアイスクリーム全種類買ってあげるって持ちかけてもそこまでの笑顔にはならないんじゃないかってくらい。
それはそれは極上な満面の笑みを、美しすぎる顔に浮かべていらっしゃるんですけど!