古い街と 聞いていたから、
人波の上を 静けさが支配しているものと思っていた。

ところが、ロウェスター中心部は とても賑やかだった。

延々 続くような建物たちは 確かに古かったけれど、
錆びた色さえ 好ましく感じられる。

どの壁も 吹き過ぎた時間を 風合いに変えて、
どの屋根も 降り積もる時間を しっかりと支えて、

褪せているのに、
実は それが元の色なんだよ、で 通じそうな、
疲労や老化を にじませないところだった。


もちろん、行き交う人たちは 活気づいている。
広い大通りには 盛んに馬車が往来して、
いくつもの ひづめの音の合間には ざわざわが絶えない。

いろんな恰好をした 男の人も女の人も、
高い笑い声で楽しそうな 子供も、
そんな街を見守る 老いた人も、

ロウェスターは たくさんのものであふれていた。



「ルウ、迷子にならないで、ちゃんとついてきてよ?」

僕が あんまり きょろきょろするものだから、
パディは 少し厳しい顔をした。

「はい!」

しっかり 気持ちを引きしめて、
僕はパディの背中を 見失わないように歩いた。

夏を前に、わくわくをばねに込めているような
ぎゅうっと 力を溜めて、ジャンプする準備のような

エネルギーが満ちる 街中の空気は
僕の心まで どきどきさせて
目に映るもの 全部が 悪戯っぽく きらきらした。




パディは 実に手際よく 買い物をすませていった。

迎える店の人も、パディをよく知っているようで、
和やかに 楽しげに 他愛ない話を交えながら
品物を ぱりっとした紙袋に 詰めてくれる。