萎れるしかない僕に、エイハブは苦笑いした。

「ルウ、俺を手伝ってくれたんだろ? ありがとうな。
 残念だが お前にできることは、まだまだ少ない。
 自分にできることを、しっかり判断せにゃならんよ」

「判断?」

エイハブは、僕の頭を ぽんぽん 朗らかに叩いた。

「今のお前で 役に立てるのは、女中たちの仕事だろうな。
 メアリに尋ねてごらん」

そして、
もうちっとデカくなったら、今度はたくさん手伝ってくれな、
と 言ってくれた。




エイハブの優しさに感謝して、僕は厨房へ向かった。
豊かさを歌う 夏雲のような湯気のそばで、
メアリたちが慌ただしく働いていた。

「僕、手伝います!」

「なあに?ルウ、ちょっと今忙しいから、
 向こうに行っててくれる?」

早々と パディに追い払われてしまう。

メアリには 僕が何か言うより先に、
通り道を塞ぐんじゃない と言わんばかりの
鋭い目で 一蹴されてしまった。

残るは、ジョイス。


彼女はきっと、僕を嫌いなんだと思う。

初めて挨拶をしたとき、
ジョイスは 何も言ってくれなかった。

アンナみたく はっきりした拒否も、
パディみたく にっこりした「よろしく」も。

だけど、次に会ったときに
僕は とても優しい笑顔で眺められた。

そして ジョイスは言ったんだ、

「可哀相」

って。


慰めてくれているのでも、哀れんでくれるのでも ないことは
僕にだって分かった。

僕は 僕を そのまま告げられたんだろう。

決して、そんなふうに思っていないのに、
そう見えているんだ。


以来、何となく 彼女には近づきにくかった。
だけど、今はがんばらなくちゃ。