何ができるか、と迷えるほど 僕は特技を持っていないから、
できそうなことに 端から挑戦することに決めた。


早起きは 得意なんだ。
だからまずは、エイハブの朝仕事を手伝おう。

彼は一日の始まりに お屋敷周りをざっと整え、馬車を用意する。
エイハブよりも ずっと早く起きた僕は、
意気込んで 前庭へ出た。


外で受ける新鮮な朝日は、体だけじゃなく
心の隅々まで 暖かくしてくれる。

強く昇ってゆく お日さまの反対側で、
おぼろに隠れてゆく 白いお月さまに誓いを立てた。

僕は、ルウ。

いつか お月さまに誇ってもらえるよう、
坊ちゃまのお役に立ちます。



エイハブは いつも道具を軽々扱っているというのに、
どれもこれも 僕には重たすぎた。
鋏や鋤は 鏡みたく磨かれていて、近づくのさえ怖い。

唯一、僕にどうにかできそうだったのは 古い箒。
夜の間に散った薔薇の欠片や、小枝を集めるためのもの。

よし、みんながびっくりするくらい、きれいにしよう!


奮闘すること、しばし。

いつも通りに起きてきた エイハブは
ずんずん 大股で近づいてきて、
急いで 僕から箒を取り上げた。

「こらぁ、ルウ!
 お前が かき散らしとるのは、秋草の新芽だ!!」

「ええっ!?」

てっきり、ならした土に生えた雑草だと思ったんだ。

「ご、ごめんなさい!」

「全く、一体どうした?
 お前に庭掃除が できるわけないだろう?」

エイハブはため息とともに屈み、
僕と並んで 目前の惨状を見やった。

「こりゃ、派手にやってくれたなぁ。
 全部 植え直さにゃいかん……」

お手伝いの真逆を しでかしてしまった。