「聞かれちゃったかな…。」

菜緒が気まずそうに肩をすくめたが、私は心臓が大きな手に鷲掴みされた様な感覚で、返事を返すことができなかった。


聞かれちゃったかな…。

否定もしない私を見られちゃったかな…。

「気にしなくていいよ、きっと。」

自分に言い聞かせる様に、笑顔で強く菜緒に言った。

「あちゃ~。」

菜緒が舌をだしながら、まぁいっかとご飯を食べ始めるのを見て、心の中では早川君でいっぱいだった。

午後一番の授業に、早川君はこなかった。

たまにサボってこない時があるから、自分たちのせいじゃないよね…と思いたい。

担任の授業だったからそのまま、明日席替えをするという話になった。

太陽の光があたって微かに反射している早川君の机が、寂しく見えた。