妙に甲高いのに不思議と穏やかな声がする。

『あら、恋ちゃんいたのぉ?
早くお店出てくれなきゃ困るじゃないのー。
お客さん待ってるのよー?』

「お、お母さんっっ!!
それどころじゃなくて、私今………」

『それどころじゃない?!!
このお店はママの夢なのに!!
それどころじゃないなんてひどいっっ!!』

私によく似た大きな瞳が、どんどん涙で潤みだす。


「う、うん、ごめん。
今行くから、すぐ行くから、お店で待ってて。」

母はそれを聞くと同時にパッと明るく表情を変えると、

『お母さんじゃなくて、ママって呼びなさいねぇ♪』

そう言い残して、ドアの向こうに消えた。



私今………

変な人に追いかけられてね、
不良の溜まり場に逃げ込んじゃってね、
そのアタマみたいな人が助けてくれてね、
でも本当はそれを条件に脅されるのかもしれなくてね、
日曜日に呼び出されててね………

怖かったよ。
すごく怖かった。
日曜日行くのも怖いよ。


そんな言葉をまた飲み込んだ。
また母には言えなかった。
また母は聞いてくれなかった。

あの時みたいに………。