強い。

この間剣道場で模擬戦をした時と同様…いや、魔槍という得物を手にした分、あの時以上に紅は手強い相手となっていた。

これ程の相手が初戦の敵とは、私もよくよくついていない。

もしかしたらこの場で敗北し、私は早くも争奪戦から脱落するのではないか。

そんな予感すらさせるほどに、紅は腕の立つ相手だった。

これで武道の経験は皆無だというのだから、彼の素質の高さは舌を巻く。

「どうした、動きが止まったが?」

皮肉たっぷりの表情で紅が槍を構える。

穂先は常に私の方を向いている。

まるで槍の穂先と私とが、糸で結び付けられているかのように。

私が動く度に、私を追って穂先が先端を向ける。

完全に照準におさめられているという事か。

ならば小細工を弄しても意味はあるまい。

私は。

「参る!」

後先考えずに間合いを詰めた!

紅ほどの相手に出し惜しみなど愚の骨頂。

全力を以って相対するのみ!