一瞬。

その一瞬だけで十分だった。

私は一足飛びに間合いを詰め、大上段から紅に斬りかかる!

「このっ…!」

目くらましで反応が遅れたものの、それでも紅は魔槍を横に構えて私の振り下ろしを受け止める!

ギィンッ!という金属がぶつかり合う音。

「ぬぅ!」

紅は前蹴りで私の腹を蹴り、突き放す!

そして。

「!!」

穂先が幾つもの残像を残すほどの、高速の突き!

それは最早『神速』と表現してもよかった。

とても全てはかわし切れず、私は刀で捌きながら後退する。

それでも全ての回避は不可能だった。

幾つかは私の身をかすめ、制服のスカートの裾が、ブレザーの袖が、白い頬が、槍の穂先をかすめさせた事で血を滲ませた。