振り向いた先は逆光で、尾行してきた相手の姿がよく見えない。

しまった。

敵を前にして逆光で目を眩ませてしまうとは何たる不覚。

これでは先手を取られてしまう。

そう思って焦ったものの。

「…?」

敵は動く事なく、私と距離をとったまま棒立ちだった。

やがて、ゆっくりとした歩みで逆光の中から姿を見せる敵。

その姿に。

「!」

私は一瞬言葉を失った。

「早くもお前と遭遇するとは、よくよく縁があるらしい」

それは、黒い槍を携えた紅だった。

鋭く光を放つ磨き抜かれた穂先に、禍々しささえ感じさせる装飾を施された漆黒の槍。

私の刀に匹敵するほどの業物である事は間違いなく、漂わせる威圧感はまさに『魔槍』と呼ぶに相応しいものだった。