久々に外に出たせいか、街の電灯がやけに目に痛い。街樹に電飾なんかして、なにをするつもりなんだろう。チカチカと鬱陶しいだけなのに。
「いらっしゃいませー。クリスマスケーキのご予約はいかがでしょうか」
 ミニスカートサンタの格好をした女の子の、黄色声で気付く。
「クリスマス、か」
 漏れてしまった独り言に、街のサンタガールはにっこりと笑いながらこちらに近づいてきた。
「いかがでしょうか? 恋人と一緒に、素敵なケーキは」
「恋人?」
「ええ、恋人と食べるにはばっちりですよ。うちのケーキは。なんてったってデコレイションが完璧ですからね」
 べらべらと宣伝文句を口にする彼女を誰かどうにかしてはくれないだろうか。突き放そうにも出来ない。自分の気弱な性格が嫌になる。
「――で、いかがですか? 一つお買いになりませんか?」
「え、ええ?」
「ここまで聞いたんだから。ね、三百円だけなら安くしますし」
「いや、俺は――」
「お願いします。買ってください」

 気が付いたら、財布から三枚ほど野口さんが消えていった。かわりにやってきたのは、やけに分厚いケーキの引換券。