「リーシャ!ふざけるのもいい加減にしろよっ?!」

 
 荒々しく怒鳴るラナルフにリーシャは飽きれ交じりに嘆息する。


 「ふざけてないよ。予想は出来ても君の考えを説明も無しに理解するなんて芸当は私には出来ないからね。そんなこと、できる人の方が珍しいと思うけど。
 それで、君は私に何を望んでるんだい?」

 「………あれを、なんとかしろ」
 
 「…さっきから随分、無茶を言うね。
 彼女をどうこうできるならとっくにそうしてる。それに、一度君の所に行ったなら明日からは私のところでは無く君の所に直接向かうだろうしね。ただ何とかしろ、と言われても困る。
 せめてもう少し、具体的にどうして欲しいのか言ってくれなくちゃ対処も難しい」


 リーシャは足を組み直し、真っ直ぐにラナルフを見据える。
 ラナルフが苦虫を噛み潰した様な顔をしているのを見て、リーシャは小さく笑ってからまた、口を開く。


 「今言ったとおり、君のところに真っ直ぐ行くだろう彼女をどうこうするのは難しい。その替わりと言ってはなんだけど、君の仕事の手助けをしてあげるよ。

 無論、資料整理とか雑用くらいしか手伝えないけどね」

 「女に政務をやらせろだと?!
 そんなことを任せられるわけが無いだろっ?!」

 
 リーシャの提案に、再び声を荒げるラナルフにリーシャは微笑んでみせる。


 「君は男尊女卑の思想の持主?あまり、女を舐めない方が良い。いつか痛い目を見るよ。
 それに、過信しているわけではないが、その辺の貴族のボンクラ息子達よりはよっぽど、私の頭は君の役に立つと思うよ」

 「どこから来るんだ、その自信?」

 「どこからって、勿論、此処から」


 此処、と自分の胸に片手を当てるリーシャにラナルフは大きくその顔を歪ませた。