「白々しいとはどういう意味だ?
 意味が解らない。君のところに行く予定や何かは無かったと思うが…何か忘れていたかい?」


 そう、予定は何もなかった筈。
 なのにこうして怒っているとなると何か忘れて不都合があったくらいしか思い浮かばない。
 

 「カトリーヌのことだ!」

 
 カトリーヌ、と聞けばリーシャは納得する。
 

 「ああ、成程。彼女、君のところに行ったのか。
 それで、どうして君が怒っているのか私には解らないんだけど」

 「お前が俺のところに行け、と言ったんだろ?
 婚約解消をお前からする気はないから俺と話せ、と」

 「言った。経済的にも立場的にも私から君との婚約を解消するのは無理だとね」

 
 それでも、毎日言っているにも関わらず、今日に限ってカトリーヌがラナルフの元に行ったのはアスタが何かしたのだろうと想像は容易い。
 

 「それで、君は何をそんなに怒ってるんだい?」

 「本気で解らないのか?」

 
 ラナルフが訝しげに眉を顰めて言う。
 怒鳴らないあたり、多少落ち着いたらしい。


 「想像はつく。したくも無い彼女の相手をしなくてはならなくて、ストレスが溜まった、とか政務がスムーズに進まなかった、とかその辺りだろ?」

 
 リーシャの言葉にラナルフは益々眉を深く顰める。