「アスタ、答えになってない」

 「あの時、リーシャが僕をふってくれたから、彼女と出会えたんだ。それについて、感謝してるんだよ」

 「ふった?私がいつ」


 怪訝そうに眉を顰めるリーシャに、アスタはにっこりと笑うだけに止める。
 解らないなら良い、と言わんばかりに。


 「父や母はともかく、僕はリーシャが義妹になるなら歓迎するよ。
 その為の協力も惜しまない」


 アスタはすっ、とリーシャの目の前に手を差し出す。
 その差し出された手に、リーシャは視線を向ける。その向けた視線を次第に手から腕。腕からアスタの顔へと移す。
 怪訝そうな視線のままのリーシャに、アスタは笑う。


 「再会と激励の握手」

 「……」

 「抱擁の方が良かった?」

 
 言葉通り、抱きついてこようとするアスタをリーシャは押しとどめて言う。
 

 「どうしてそうなるの。
 握手も抱擁も要らないから、政務に戻ったら?」

 「うん、そうだね。
 それじゃあ僕は行くけど…」

 
 いったん、そこでアスタは言葉を区切る。


 「激励ついでに、カトリーヌ嬢のことは僕に任せてくれる?」

 「何でアスタに?」

 「それは下心があるから」

 「下心?」

 
 怪訝そうに尋ねてくるリーシャにアスタはただ微笑んで踵を返す。
 答えを聞いていないのに、さっさと歩きだしたアスタにリーシャは軽く嘆息して、本へと視線を落とす。


 本を眺めながら、また妙な展開になったものだ、と胸中で思い、溜息を落とした。